雪山登山2018年1月2日現在の屋久島奥岳の積雪情報を含めて、雪が積もった時の冬の縦走路(白谷雲水峡〜縄文杉〜宮之浦岳〜淀川登山口)の紹介です。
2017年の大晦日に白谷雲水峡から入山して2泊3日で黄金縦走ルート(白谷雲水峡〜縄文杉〜淀川登山口)をトレッキングしてきました。ここ3年は元旦を山で過ごさせてもらっていて幸せなことです。一昨年はリピーターのハルくんと黒味岳で、去年は真っ白の富士山の山頂で。そして、2018年はアキさんと男二人の山旅。さあ、どうなるかなあ。
10月下旬ごろから咲きだすサザンカの花がまだ残ってました。白谷雲水峡にて。
低気圧の通過と共にスタートしたので、初日は冷たい雨。途中激しい霰がバタバタと降ることも。傘がないと痛いぐらい。すれ違ったガイドさんに「ファンキーな霰(あられ)だったね」と言われ、確かにっ!笑 高塚小屋までは積雪なしでした。ファンキー霰で2017年をしめることができて幸せです。いい年でした!遊びに来てくれた皆さん、ありがとうございました。
そして、あけましておめでとうございます!初日の出は高塚小屋から狙い、赤く染まる空を見ることができました。御来光は残念ながら見ることができず。さあ、今日は宮之浦岳を越えられるかなあ。縄文杉周辺はインターネットが使えるので天気予報をチェックすると、予想通り低気圧が通過した後の西高東低の気圧配置。里の天気予報は昼過ぎから晴れ予報だが、冬の奥岳は晴れず1日は雲が残ることが多く、強風もたまらない殺人的な寒さで吹きつけてくる感じが予想できる天気図を見て、迷わず諦めることに。男ふたりスヤスヤと二度寝で新年を迎えました。気持ちよかったなあ。目覚めにアキさんは縄文杉をもう一度見に行って、僕はゆっくりの朝ごはんをつくってのんびりスタート。エネルギーチャージをしながら、今日の作戦会議。アキさんは写真好き&コケ好きなので高塚山の森をじっくり写真撮りながら過ごすことに。標高を上げるにつれて森は濃霧の世界に。高塚小屋上からは階段のベチャベチャ雪が所々凍っていたのでゴムスパイクを装着。積雪はほとんどない状態でした。
高塚小屋〜新高塚小屋区間にて。木々には綺麗な霧氷が。昨日の雨の影響かな。雨の翌日は霧氷が木々につくことが多いです。霧氷は、空気中の水滴や水蒸気が木や岩などに付着して凍結してできた氷層のことをいいます。
新高塚小屋を超えると道はこんな感じ。積雪5〜10cmぐらいで、昨日の夜から吹き続けている冷たい強風の影響か、ところどころ雪が凍っていてゴムスパイクでは危ない状態。第一展望台付近で6本爪のアイゼンに交換。
冬の縦走路は雪が凍った階段が最も危ない気がします。
ここのヒメシャラの森はやっぱりナンバーワンに美しいです。雪を被るとよりいっそうです。
坊主岩のすぐそばにあるこの巨石には毎年スパイラルの海老の尻尾が見事についてます。海老の尻尾は山用語なんでしょうか。空気中の雨や水蒸気、雪が強風によって木や岩にぶつかって、凍結してくっついた氷の層のことをいいます。坊主岩付近は高い木々がなく見晴らしがいいので、風当たりが強いのでしょう。
ここから平石までの雪山の森の美しさは素晴らしいものがあります。ここの森を男ふたり十二分に夢中で写真撮影し元旦はカメラ三昧の1日となりました。ここは1泊だと足早に通り過ぎてしまう区間ですが、雪に包まれた期間だけはじっくり雪森の美しさに心を奪われて1日過ごしたい聖地です。それができるのが、2泊縦走の魅力です。もし1泊だったとしたら、やむなく荒川登山口に引き返すか、強行突破で宮之浦岳を越えるか。。。両者ともに虚しい結末となりそうです。天気が変わりやすい山の縦走は選択肢が増える余裕を持ったプランを立てることをお勧めします。
今回一番の僕のお気に入りの御仁は、この老木。2人でたっぷり時間をかけて撮影しました。縄文杉より夢中になれます。
時間がだいぶあったので平石まで行ってみることに。すると雲がだいぶとれてきていい感じの展望に。写真のこのロープ場が僕にとっては雪山の縦走で最も緊張する場所。がっつり積もっているとロープがなくなり、よく凍ってます。アイゼンワークが心配なお客さんの場合、支点を作ってロープを垂らし、お客さんにハーネスをつけてもらってという具合に、安全確保のため色々やらないといけない箇所です。今回はほとんど雪がなくホッと一安心。雪山をやっているアキさんだったので、笑顔を見せてくれる余裕が。そして、平石のピークに立つと、、、。どどどーん!
今まで真っ白で何も見えなかった風景の雲が消え、宮之浦岳が姿を現した! 二人で叫んだ瞬間、、、
あっという間に隠れた〜。笑 でも、夕日に照らされる翁岳と染まる東の空がしばらく見えていたので、しばしボーッと静寂の感動タイムを過ごすことができました。きっと宮之浦岳より南は最高の眺めが広がっていたと思います。そんなガイド的思いがどうしても湧いてしまいますが、至福の時間だったことは間違いありません。時間にして10分ぐらいだったでしょうか。この短い束の間のワクワクタイムが2日間の苦労を一瞬でどこかに消し去ってしまう。山登りにはそんな魅力があります。
そして、1月2日は満月。完全に雲のとれた奥岳は煌煌とお月様が雪を照らし、夜とは思えない明るい銀世界となりました。
「明日は宮之浦岳で御来光を見たい!」
ガイド冥利に尽きるお言葉をいただき、3日目は早!早!早朝に起き上がってはりきって屋久島最高峰のお山に向かいました。
お月さんはまだ上空にあり、宮之浦岳に近づくに従って永田岳の真上にお月さんが!雲一つない夜空。これは日の出が期待できます。風は止み、この時期の月の動きもインプットでき、楽しいナイトハイクでした。
雲ひとつない状態のまま勢いよく出てきました。今年初の御来光でした。
空気が澄んでいたからなのか、宮之浦岳からはたくさんの島々が見えました。黒島に硫黄島、竹島、開聞岳、大隅半島。そして、開聞岳と大隅半島の間に二つの見慣れない山並みが。桜島と霧島の山々かな?? 9年島に住んでで初めてのことでした。
山頂はさすがに風が常に吹いている状態で、温度計をチェックするとマイナス7℃。元旦と違ってまったり朝寝はとてもできる環境ではなく、手足のかじかみに耐えられなくなって下山することに。宮之浦岳の南面は雪はかなり減り、北面にはあった笹の雪も全くなく、とても歩きやすい状態が翁岳麓まで続きましたが、その先からは、少し厄介です。数日前に溶けた雪が小川となって、それがまた寒波で再び凍ってしまった箇所がたくさんあり、投石平までは6本以上のアイゼン、そこから花之江河まではゴムスパイクが必要です。
しっかりアイゼンの爪をささないと滑ってしまうような写真のような箇所が多数です。
小花之江河付近の水が溜まる沢を越えれば、もう雪も氷もない安心な状態です。
淀川でまったりとして、夕方無事に淀川登山口に到着しました。路面凍結で通行止になってる可能性を考慮していたのですが、その心配はなく、今年の初山行はあっという間に終了してしまいました。内心、尾之間歩道を下って尾之間温泉まで行きたかったなあなんて新年だからか少し思ってしまいました、、、。この区間の森と沢がまたたまらなく美しいです。その魅力はまたの機会に紹介したいと思います。
アペルイしゅんぞうより、2018年正月の屋久島奥岳の山岳情報でした。みなさん、今年もよろしくお願いします!
永田岳の上空にいつまでも残っていた月が朝日に照らされレッドムーンに。もう二度と出会うことのない一期一会の瞬間の連続を僕らは生きているんだなあ。山は人を詩人にします。最高のシーンでした。