西日本豪雨で被害を拡大させた巨大な「コアストーン」の崩落が、先日の大雨で屋久島でも発生。崖崩れが起きた部分には深い岩盤まで崩れる深層崩壊が起きていたことが国土交通省や鹿児島大学の調査で明らかになったそうです。
コアストーン崩落に深層崩壊も 屋久島被害を国など調査:朝日新聞デジタル
写真のハートの形に崖崩れをした部分の下部は一体どうなっているのだろう。
そんな思いで、尾立岳南部の麓、千頭川へ行ってきました。崩壊下部と千頭川の出会いは落差100m以上をゆうに超える滝が出現していました。
新たに出現したこの岸壁の鮮やかなグレー色部分が、今回崩れ去ったコアストーンの跡であることが推測できます。千頭川の対岸(右岸)からこの写真を撮影しましたが、沢からの高さは10m以上あったでしょうか。写真に入り込んでいる折れた枝。この枝以外にも、かなりの木々が折れていました。今回の崩壊は、崩れ落ちてきたコアストーンが対岸のかなり高いところまでぶつかってくるほどの勢いがあったのかもしれません。また、この撮影地のラインまで、直径20cmほどの流木が既存の木に絡まっていました。とんでもない洪水だったことが予想されます。
その増水の凄さは、写真の滝壺に落ちたであろう大量のコアストーンの残骸がないことで想像できます。上部のハート型の崩壊物が千頭川まで到達していなかったとして、写真の滝部分の崩壊物の量をざっと想像するだけでも、明らかに少ない印象でした。案の定、崩落した巨大な花崗岩は洪水の川が運び去り、この滝の50mほど下流にある落差15mほどの滝の下に地獄絵図のように大量にたまっていました。
なぜ、あれほどまでの崖崩れが起きたのか。あそこまでの大崩落が起きたのは果たして多量の雨のみが原因なのでしょうか。安易に決めつけることなく多角的に考察する必要があると思います。
最近、湯泊林道のゲート上を歩いてきたのですが、過去の崩落箇所は以前のままで、かなりの箇所で林道が土砂で塞がり、森に還りつつあります。屋久島で毎年起きる崖崩れの下部には必ずとは言わないまでもかなりの確率で、林道やトロッコ道があります。今回の崩壊した尾立岳の南部には安房線が。そして西部には未だ復旧作業が続いている荒川線が。
大地の下の世界をイマジンすることは地「上」で生きている者には難しいことですが、地下には毛細血管のようにはりめぐらされた水の通り道と空気の通り道があります。そのパイプラインに血栓のような流れを止めてしまうモノがあったとしたら、その栓から上のパイプラインには水がどんどん溜まっていき、液状化していくことが予想されます。写真を撮影した場所は花崗岩の風化した砂が溜まっていたのですが、くるぶしの上まで埋まってしまうほど緩んでいました。
地下で起きている「詰まりの液状化」
このブヨブヨになった状態だと、大岩(コアストーン)は勾配のきつい斜面ではとどまることができないだろうなあ、そんな風に思いました。
ここ数年、毎年起きる自然災害。異常気象。その因果を特定することは容易ではありませんが、単に自然現象として片付けるのではなく、山の開発のあり方も含めて多角的に考察し続けていくことが大切だと考えます。
仏教では「因果」とはこう言われています。
「すべての行為は後の運命を決定する。特に、前世の悪い行いのむくいとして現在の不幸がある。」
この度重なる地震や洪水、土砂災害。自然災害がもたらす不幸の因果の答えはいったいどこに。
山に入るといつも山との不思議な一体感を感じます。
山と人はきっと強く繋がっている