雪の森で迎える朝陽は、あたりをふんわりとした色調に変化させてくれて、非現実的なおとぎの国にトリップしたかのような感覚にしてくれます。それでいて、どこか懐かしい気分に。
今から40億年ほど前、海の中で最初に誕生した生きものは小さな小さな単細胞だったと言われています。
その生命の誕生からおよそ10億年後、二酸化炭素と水から酸素と栄養をつくり出すことのできる植物が誕生しました。植物といっても根があるわけではなく、海の中をただよっていただろうといわれています。
やがて、ふわふわ生活から地に根をはるコンブのような植物に進化しました。さらに植物は陸上で生きていけるように自分たちをバージョンアップさせ、コケやシダが生まれました。
そして、3~2億年くらい前に、今ボクらが木とよんでいる裸子植物や被子植物が誕生し、森が生まれたと言われています。とてつもない時間がかかっています。
同様にして僕らの先祖の動物たちも、この植物の歴史と深く関わり合いながら悠久のときのなかで、命をつないできました。
屋久島の深い森にたたずんでいると湧き上がってくる懐かしさは、DNAにまで浸透しているこの深い植物との関わり合いからやってくるものなのかもしれません。
自然を一掃し、人間の利便性だけをとことん追求してつくりあげてしまった都会。そこで生きる人たちが癒しを求めに僻地の屋久島まで押し寄せてくる現象は、この植物との深い関わり合いを潜在的に魂が希求している現れのような気がしています。
「これが好き!」
「これが気持ちいい!」
「こうしたい!」
「次はあれがやりたい!」
「こうやって生きていきたい!」
森にいると旅人の多くは、場の空気が読めない幼稚園児のようになっていきます。笑
生命としての魂の叫びが続々と湧きだしてくる森歩きは、外の世界を旅しているようで実は、自然と離れて暮らすことで薄れ、気づけなくなってしまっている「ありのままの自分の心が現在進行形で抱いている思い」と、しっかり対話してあげる内なる旅の時間なのかもしれません。