屋久島で最も人気のある【淀川登山口〜宮之浦岳〜縄文杉〜白谷雲水峡】の区間をトレッキングする縦走。屋久島での主流はこのコースを1泊で駆け抜けますが、その縦走スタイルはまるで日帰り縄文杉のよう。終始歩きっぱなしなんです。1日10時間以上の歩行が約束されます。スパルタ〜。そこで2泊にすることのメリットを力説したいと思います。
2泊3日で縦走することのメリット
- 朝の出発時間がゆったりの8:00前後。1泊2日の縦走の場合、宿のお迎えは4:00前後となります。もちろん早朝に入山して、森になが〜くまったりも可能です。また、お昼に島に入られる方は、その日からの入山は困難だと思っている方が多いですが、午後から夕方にかけて入山しても十分2泊3日の縦走は可能です。淀川登山口からの入山の場合、歩いて1時間ほどして淀川小屋があるので、夕方島に入ってきて、寝るためだけにホテルに泊まるより、小屋泊ないしテント泊する方が、屋久島の自然を体感できる時間がぐっと増えます。そして、宿代が浮く嬉しいおまけもついてきます。
- 荒川登山口でスタートorゴールする場合、1日に歩く時間は5〜7時間と程よいです。白谷雲水峡を選択された場合は、3日のうち1日だけ8〜9時間歩くことになります。
- 休憩時間、自由な時間が長く取れます。淀川登山口から入山した場合、1時間ほどで淀川という清流にたどり着きます。これまで屋久島で9年ガイドをしてきて、この沢に出会って感動しなかった人はいないという、感動率100%の極上の沢です。この沢の美しさに惹かれ、予定を全て変更し、この沢のすぐそばにある淀川小屋に3泊して、ずっとこの沢にいた女性がいたそうです。それほどの沢なので、2泊の場合は、たっぷり時間をとります。夏には、足をつけて遊ぶことも。荒川登山口でゴールする場合は、これまた清流の安房川にも立ち寄ります。足をつければ一気に疲れが吹き飛びます。そのまま昼寝する時間もしっかり確保します。
- 1泊2日の場合、とても寄る時間を作れない黒味岳の登頂が可能になります。淀川登山口から出発した場合、石塚小屋に宿泊して黒味岳から夕日、朝日を見ることが。山のてっぺんでマジックアワータイム(夕日と朝日で空の色が幻想的になる時間)を過ごすのは、縦走の醍醐味です。1泊でマジックアワーを狙う場合は、行程的にどうしても平石と新高塚小屋の間にある第二展望台のみとなってしまいます。これまで何度もここで狙いましたが、感動的なシーンに出会う確率は少ないです。このポイントは宮之浦岳より北東部に位置しているので、夕日は宮之浦岳の向こうに沈みます。相当な雲の広がりがあって、その雲たちが染まらないと夕焼けは見れません。朝日はなかなかいいです。しかし、1泊行程で第二展望台で朝日を狙う場合、白谷雲水峡からスタートした場合、新高塚小屋まで上がっておきたいのですが、そうすると1日目の歩行時間は12時間以上となるでしょう。サンライズ中毒の僕は全然苦にはならないですが、一般の人にとったら、、、。逆に淀川登山口からスタートすると、翌日の行程の長さと早朝の出発時間を考えると日没前には新高塚小屋までは到着しておきたです。白谷雲水峡をゴールにするなら、高塚小屋までできれば下りておきたいなあと思うのが現地ガイドの心情です。なので、1泊だとどうしてもマジックアワーは森の中で、ということになります。もちろん森の中に差し込む黄金の太陽光は、誠に美しいです。
- さあ、まだまだメリットはあります。2泊の場合、2日目に自由度が出て、たくさんの選択肢が生まれます。これまでたくさんの感動の引き出しをこの「2日目に」お客さんと発見してきました。例えば、2日目の朝はゆったり起床して、1泊で縄文杉を見に来た人たちがいなくなるのをコーヒーを飲みながら待って、貸切の縄文杉と心ゆくまで過ごしてから、縄文杉の鎮座する高塚山の原生的な森をじっくりまったり。多くの人は縄文杉というとてつもなくデカイ存在に意識が向きがちですが、その巨木を生み出した森にフォーカスすると、なぜゆえこの巨木が生まれたのかガイドの解説を聞くより不思議と腑に落ちます(ガイドとして少し悔しいですが笑)。とても美しくエネルギーの満ちた森です。特に高塚小屋から第一展望台までの区間はうっとり。時折ヒメシャラの巨木が群生していますが、今のところ僕にとって屋久島一のヒメシャラ林です。写真好きな方でしたら1日ずっとこの森で夢中になれるでしょう。2日目をこの森で過ごすことで、1日目の疲れがとれるメリットがありますが、何よりも「山は歩くもの」という概念から「山で暮らす」という新たな心地の良い概念が生まれると思います。それを促すように、お茶タイム、お昼寝タイムたくさんとります。人生の急ぎ足を止め、森でゆったりしましょう。運が良ければ、こんなシーンにも出会えます。
- 2日目の過ごし方をもう一つ。これは体力のある方に限りますが、永田岳に足を延ばすという選択肢です。永田岳は登山道がある山では当店がおすすめするナンバーワンの御山です。宮之浦岳からは見ることのできない永田岳の北に広がる世界は圧巻です。宮之浦岳で見る展望は優雅で女性的なイメージですが、永田岳ピークから眼下に広がる世界は男性的で、特に障子尾根(下の写真)の花崗岩の立ち上がりには、興奮すること間違いなしです。そんな場所で夕日に染まる雲海なんかを見てしまったら、、、もうサンライズトレッキング中毒者になること間違いなしです。笑 永田岳に足を延ばすと3日目も行程が長くなるので、そのことも考慮して選択を。また、永田岳から花山歩道と永田歩道に抜けるコースがあります。事前に問い合わせいただけたらアレンジ可能です。
- 屋久島最高峰宮之浦岳の御来光を狙えます。淀川登山口からスタートした場合、2日目の夜明け前に。白谷雲水峡および荒川登山口からスタートした場合、3日目の夜明け前に狙うこととなります。共に前日の就寝タイムを早くすることで、可能となります。日の出後の、朝食は最幸に美味しいです。食後の朝寝の気持ちよさといったら・・・。冬は厳しいですが、しっかり至福の朝寝タイムを2泊なら確保できます。これは、御来光マニアのかた向けですね。笑
- 花之江河にはたくさんの登山道が集結しています。湯泊歩道にちょっと足を伸ばしてみる時間も。その登山道には、、、
もうこれ以上書くと長くなってしまうので(すでに長い)、まだまだ2泊の魅力を聞きたい方はお問い合わせを。とにかく2泊にするメリットはたくさんあって、ぐっと屋久島の旅がディープになることは間違いありません。どんどん忙しくなっていく日本。屋久島に来た時だけは、ゆったりと時間を過ごされてみてください。せわしい1泊縦走では感じることのできない太古から続く「もう一つの」悠久なるトキの流れに皆さんを誘います。