屋久島は洋上のアルプスと呼ばれるほど多くの尾根が存在しています。が、しかし!さすがに南の島なので、標高の低いほとんどの尾根には灌木(樹高が約3m以下の木)がよく成長しているため、北アルプスのように大展望を見ながら満喫できる極上尾根はほとんどありません。中心部の標高の高いエリアにだけ、存在しているということです。島ではそのエリアを奥岳と呼んで崇めてきたそうです。初めて僕がその山域に足を踏み入れた時、里とも縄文杉付近の森とも異なる異次元の世界に感動し、カミの気配を体感した不思議な体験をしています。それ以来、この山域を「天上界」と呼んで、好んで足を踏み入れています。屋久島の天上界の魅力は世俗的なものが登山道と看板以外一切ないということです。何千年前とほとんど変わらないであろう太古の山岳を体感することができます。北アルプスの表銀座を縦走した際、大キレットを縦走して北穂高に上り詰めた時に、山頂でただようラーメンの匂いにはがったりしました。笑 山頂にはでかでかとリッチな山小屋があって、缶ビールで乾杯してる人の多さに、山の容姿はすごいかっこいいはずなのに、正直とても興ざめしてしまったことが未だに忘れられません。
山の山頂には大空、眼下には森だけあればいい。
当たり前のようで、なかなか出会えないそんな原生の山岳風景が屋久島の深部には存在しています。そして、晴天であれば樹海の先に大海原の広がりを垣間見れることも屋久島の山岳の魅力です。
そんな神秘的な世界を縦走できる数少ないエキサイティングなトレイルは、僕的には4つあると思っています。まず一つ目が、最も有名なルート。日本百名山の100番目の山「宮之浦岳」を登り、縄文杉の鎮座する森に向かう縦走路です。屋久島の縦走というと9割以上の登山者がこのルートを辿ります。当店では「黄金縦走ルート」と呼んでいます。そして2つ目は宮之浦岳付近で黄金縦走ルートと分岐し永田岳に向かう縦走ルート。そして3つ目は、永田岳から始まる障子尾根。そして、4つ目は太忠岳〜花折岳〜石塚山の山塊。